こんにちは!
2009年から洋菓子店を経営しています。
伊東といいます。
簡単な自己紹介は以下です。
~自己紹介~
大学卒業後、東証一部(現東証プライム)上場コンサル会社に就職。7年半勤務の後、パティシエである奥さんと共に、2009年1月に洋菓子店を開業。
国内22,000店舗中、食べログでTOP100の評価を頂いています。現在は子育てとシェフパティシエ業を両立中の奥さんを支えつつ会社経営中。
私が経営する洋菓子店では、製菓業界の古い常識を変えるべく挑戦を続けています。
そして、その挑戦の土台となるミッション・ビジョン・バリュー(以下MVV)を作り、実践していこう!と考えました。
その経緯や、詳細については「前編」でご紹介していますので、まだの方はぜひご一読ください。
今回は「後編」として、MVVの詳細についてお伝えできればと思っています。
それではいきましょう!
ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋のMVVとは?
まず、改めてMVVについて確認しておきます。
いろいろ~~~な事を考えて、数か月かけて形にしました。。
【Mission~ミッション~】
私達は、一切の妥協なく「心ある」「本物のお菓子作り」に真摯に取り組み、「本物のパティシエ」が働く場所を創っていきます。そして、本物のお菓子を知り尽くした芦屋のお客様に「芸術的で心を満たす体験・価値」をお届けします。
【Vision~ビジョン~】
「心ある」「本物のお菓子」で芦屋を代表する洋菓子店になる
【Value~バリュー~】
「心ある」「本物のお菓子」を届ける事にプライドを持つ
未来を肯定する
お客様の喜びを第一に
では、1つ1つ詳細を解説していきます。
Mission~ミッション~
これを読んで何を感じますか??
ミッションは、私達の根幹です。一言一句に意味があります。
本物のお菓子づくり
本物のパティシエ
本物のお菓子を知り尽くした芦屋のお客様
芸術的で心を満たす体験・価値
ミッションは、私達の存在理由であり、私達は、誰の何の為に存在するのか?という問いに対する答えです。
スタッフの皆さん、そして私達を支えて下さるお客様の為に、お店は存在します。
では、本物のお菓子づくりとは何か?本物のパティシエとは何か?など詳しく解説していきます。
本物のお菓子作りとは?
私が考える「本物のお菓子作り」とは次の4つを満たす事です。
・原理原則である製菓理論に忠実であること
・原材料は最も適切なものを使う。代替品や添加物でごまかさない。
・製菓理論の知識、熟達した技術を駆使すること
・作り手の満足ではなく、顧客に感動を届けるお菓子であること
少し深堀していきます。
【製菓理論】
2009年から洋菓子店を経営し、多くのパティシエを見てきました。
しかし、、
残念ながら、その殆どはまともに勉強していません。
生クリームが液体から固体に近づく原理、オーバーランについてなど基本的な事すらまともに理解していないにも関わらず、お客様に提供するケーキを作っている。
「カン」でお菓子を作るのは「趣味」の領域です。
私達は「プロフェッショナル」です。
お客様から商品の対価を頂くわけですから「基本を勉強していません。」ではプロとして失格ですし、本物のお菓子とはほど遠いお菓子が出来上がることになります。
【原材料】
例えば繰り返し起こる「バター不足」。代替品のマーガリンやショートニングを使って凌ぐような事はしません。「バター」を使うのが適切な商品をバターがないからと言って、代替品を使って作る。そんなごまかすような事はしません。
【技術】
同じレシピでも作り手の技術レベルの差で全く異なるお菓子ができあがります。
熟達する事を目指し「より美しく」「より美味しく」「より早く」技術を高めていく事が
本物のお菓子作りに通じると考えています。
【顧客】
「こんなお菓子が欲しかった!」と顧客に感動を届ける事ができるお菓子作りを追及していく事が大切です。「自分が作りたいお菓子を作る」というのは「趣味」です。
本物のお菓子とは、お客様に感動を届ける事ができる。
お客様自身では想像ができない。でも「こういうのが食べたかった!」と言って頂けるようなお菓子作りを大切にしています。
語弊を恐れずにいうと、お客様が想像できるお菓子は「普通の世の中のどこにでもあるお菓子」になりがちです。
例えばiphoneなどが良い例です。
世界中の誰も「iphoneみたいなスマートフォンが欲しい」とは思っていなかったはずです。
でもAppleから世に出された時に「こういうスマートフォンが欲しかった!」と思われて世界中で売れる商品になりました。
「本物のお菓子作り」は「こんなお菓子が欲しかった!」を形にしていくということです。
本物のパティシエとは?
本物のパティシエとは何でしょうか?
・製菓理論を習熟している
・ゼロからオリジナリティあるお菓子を創出できる
・そのお菓子はお客様に感動を届けることができる
・現状に安住せずに常に自分自身を磨き続けることができる
「お菓子作りに全身全霊をかけ続けることができる」ということです。
ごく少数派だと思います。
でも、私達は、シェフは、本物のパティシエを目指し、努力を続けています。
本物のお菓子を知り尽くした芦屋のお客様とは?
私達の主要なお客様は地元である芦屋の皆さまです。目も舌も肥えた方、製菓関連の知識が豊富な方が多くいます。
チャーン製法の発酵バター、ヴァローナのショコラ、シシリーのピスタチオなどお客様が日頃使っていたり、実際に現地に行って食したことがあるなど聞く事があります。専門の私達ならともかく、お客様がこのような知識や経験を持っている方が多いのには驚くことが多いです。
創業以来、私達はそのようなお客様から様々な事を教えて頂くと共に、時には叱咤激励を頂きながらお菓子作りを続けてきています。
芦屋市は、1人あたりの菓子消費額が全国でもトップクラスです。
それだけ日常的にお菓子に触れているという事です。
そんな知識も経験も豊富で、日常的にお菓子に慣れ親しんでいる芦屋の住民の皆様が私達の主要なお客様です。
つまり、本物のお菓子を知るお客様に対し、それ以上の価値を提供できるお店になっていかないといけないということです。
芸術的で心を満たす体験・価値とは?
ただ美味しいお菓子を作れば良いという理由ではありません。
芸術的な「作品」とも呼べるお菓子を提供するからこそ、お客様は心を満たす体験をすることができます。それこそが私達がお客様に提供していきたい価値です。
だから1つ1つに全身全霊をかけてお菓子作りには取り組む必要があります。
雑な仕上げ、雑なフィルム巻き、雑な接客、雑な包装、言葉づかいなど全てがお客様が感じる体験・価値です。
私達はお菓子を通じ「芸術的」「心を満たす体験・価値」を提供したいと考えています。
ここを追求する事が「本物のお菓子を知り尽くした芦屋のお客様」に喜びや感動を届ける事につながると考えています。
ミッションは、一言一句に様々な考え、想いのもと1つの文章としてまとめています。
次に「ビジョン」いきましょう!
Vision~ビジョン~
私達は、芦屋のお客様と共にあります。
テナントのオーナーは、ショップカードを知人に自ら配って頂いたり、ご家族は今でも事ある毎に当店のお菓子を使って頂いています。
「芦屋は厳しいお客が多いよ。頑張ってね。」
「良いものを作らないとダメだよ。」
アドバイスや激励を頂くことも多くありました。
私達に今の物件を紹介頂いた不動産屋さんも当店のお菓子を使って頂いています。
これまでの私達の歩みには常に地元「芦屋のお客様」がいました。
創業以来ずっとご利用し続けて頂いているお客様が多くいます。
創業当初は本当に「ひま~~」な毎日でした。
お菓子は売れないし、ケーキは売れ残ってしまってゴミ袋に泣く泣く捨てる日々でした。
でも、叱咤激励を頂くお客様に支えられて、様々な改善を進めていく事で少しずつ成長していくことができました。
芦屋は厳しい地域です。
ケーキ屋は良く開業する地域ですが、10年もすれば70%は閉店に追い込まれています。
残るのは30%未満です。
2009年1月に創業してから今までやってこれたのは私達を支えて頂いたお客様のお蔭です。
本当にありがたく、感謝しています。
そして、感謝とは報いることだと私は考えます。(「ありがとう」と言葉を発するだけでは足りません。)
では、どう「報いるか」
それを考えた時に、このビジョンが鮮明になりました。
「心ある」「本物のお菓子」で芦屋を代表する洋菓子店になる
地元のお客様にとって本当に必要とされる、価値があって、誇れる、そんな洋菓子店を目指し実現をしていくことがこれまでご利用頂いているお客様への報いになるはずです。
まだまだ、道半ばです。未熟な点、改善点は多くあります。
だから、このビジョンの実現がまずは中心にあるべきだと考えています。
Value~バリュー~
なぜValueが必要なのか?
ミッション・ビジョンを実現していくにあたり、日々どのような行動や方針をとっていけば良いのか?がValue(バリュー)です。
人それぞれ色々な価値観があります。
富士山への登山を例に考えてみましょう。
デジタル庁のWEBサイトに良い例が出ていましたので私なりに解釈をして解説します。
ミッション「頂上から最高の景色を見たい」
ビジョン「朝5時に登頂してご来光を見る」
この時のバリューの例が以下です。
「山梨県側の吉田ルートから登ろう」
「静岡県側の御殿場ルートから登ろう」
「1泊2日の工程でいこう」
「もう少しゆっくりして2泊3日でいこう」
「いやいや最も難関なルートから登ろう」
「傾斜が緩やかでゆっくり景色が楽しめるルートで登ろう」
バリュー自体には正解・不正解はありません。
ミッション・ビジョン実現の為に、「自分達はこの考え方が好きだ!」とか「私達にとってはこの登り方の方がビジョンを実現しやすい」など価値観・好みの問題であり、価値観や好みに従って選択する事になります。
この価値観が組織で擦り合っていないとどうなるか?
「私はそのルートは大変だから嫌」
「最難関ルートでいくべきでしょ」
「いやいや、最短のルートでいくべき」
「初心者もいるから、初心者ルートでいくべき」
・・・
収集がつきませんよね。。
だって、全員それぞれの価値観でそれぞれの意見を言っているので誰が正しいとか間違っているとか無いわけですから。
そして、正解の無い議論がいつまでも続き、方針が定まりません。
その結果、ミッション・ビジョンの実現が遠のきます。
特に私達「製菓の世界」は「職人の世界」でもあります。
一癖、二癖ある方が多い世界です。
しかし、製菓の世界ではそんな事をやっている会社はごくわずかな上場企業や、大手企業や中堅企業のみです。大多数を占める、中小・個店では「皆無」と言っても良いと思います。
この取り組みを実行していくのは、簡単ではないでしょう。スタッフの立場からすると「そんな事やって何になるの?」と感じる人の方が多いでしょう。
でも私はあえて挑戦したいと思っています。
Valueそれぞれの意味について
色々と本当はValueはあるのですが、多すぎても覚えられないし、徹底できないと思ったので3つに絞っています。それぞれの意味について簡単に解説します。
Value①「心ある」「本物のお菓子」を届ける事にプライドを持つ
「できたて」
「本物の材料」
「細部に妥協しない」
「手間をかける」
「お菓子の本質的な良さを伝える」
言葉にするのは簡単です。
でも、実行するのは本当に難しい。
創業以来、私達は挑戦し続けてきました。
この日々の積み重ねがお客様からの評価を高めていくと共に、
私達への盤石な信頼の土台となります。
だからこそ、私達は本物のお菓子を届ける事にプライドを持ち続けます。
そして、現状に安住せず、常に高みを追求していきます。
Value②未来を肯定する
本物を知り尽くしている芦屋のお客様に「芦屋を代表するお店」と認めて頂くには様々なハードルがあります。簡単ではありません。
「自分にはできない」
そう感じる事もあるかもしれません。
でも、自分の未来は「肯定」して欲しいと思います。
「目指している自分になれる!」
「お客様に本物のお菓子を届ける事ができる!」
自分が肯定した未来に向けて努力を続けた先に、お客様の喜びや幸福があります。
それが【芦屋を代表する洋菓子店】の実現に繋がります。
私達は本物を知る芦屋のお客様に育てられてきました。
要求頂いている水準を超える仕事ができるよう努力を続けてきました。
それはこれからも変わりません。
「未来を肯定する」から「未来が近づき実現する」
商品の先にいるお客様の喜びを想像しながら、日頃から未来を肯定する事を習慣に
していきます。
Value③お客様の喜びを第一に
忙しいからと言って笑顔もない適当な「いらっしゃいませ」になってませんか?
忙しいからと言ってケーキの飾り付けを雑に仕上げてませんか?
やり直しが面倒だからと言って少しの計量ミスを妥協していませんか?
急いでいたから・・と言って雑な包装・梱包になっていませんか?
これらはすべて「自分>お客様」です。
私達は誰の為に、何の為にお菓子を作り、提供するのか?
お菓子を通じてお客様の幸せに貢献する為です。
(流れ作業ではなく)心ある、温かみある接客
(自分優先ではなく)お客様の喜びを第一に考えるお菓子作り
言葉で言うだけなら簡単です。
実行し続けることが大切です。
私達は口先だけではなく、愚直に、妥協なく「お客様の喜びを第一に」実行する努力を続けていきます。
ここからが「はじまり」
バリューについては以上です。いかがでしたか?
常にここに立ち返り、ここを軸に日頃の業務に活かしていく事がミッション、ビジョンの実現につながっていく。
「このバリューが、ミッション・ビジョンへの近道なんだよ!」
そう信じて、口を酸っぱくして言い続けていこうと思います。
私自身、新卒で就職した会社で、ミッション・ビジョン・バリューについて徹底して教育を受けてきました。その重要性は実体験で理解できています。
経営者として独立をして倒産せずに継続できているのは、この時の体験や教育のお蔭だと心底思っています。
その価値を、一緒に働く皆さんとも共有、体験できると良いなと思っています。
その結果、ミッション、ビジョンの実現に近づいていけると思うのです。
まとめ
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、誰の為に存在するのか?
【お客様のため】
お店の価値を高め、芸術的で心を満たす体験・価値を届けるためです。
そして、
【スタッフのため】
お店の価値を高めるには従業員1人1人の能力・人間性、価値が高まる必要があります。
結果、1人1人が誇りを持って日々働き、生活を送ることに繋がると信じています。
「誇りを持って仕事を続けることができる」
その「はじまり」が「MVV」です。
2009年1月10日に創業してから、追い求め続けていることです。
更に、更に、追い求めていきたいと思います。
※「前編」をまだ読まれていない方はぜひご覧ください。